命を救うための最後の手段となることもある臓器移植。しかし、大半の人にとっては人生の中で関わることがないものでもあり、臓器移植の現実を知っている人はごく少数なのではないでしょうか?
芦刈淳太郎さんは、公益社団法人 日本臓器移植ネットワークに所属し、臓器移植コーディネーターとして、臓器移植の最前線での活動を続けてきました。今回は芦刈さんに、日本の臓器移植の現状や、今後目指すべき社会の姿について、お話しいただきました。
【プロフィール】
公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク調査・研究部部長チーフ移植コーディネーター。大学院終了後は、臓器移植コーディネーターとして活躍。臓器移植医療がより身近になり、多くの命が救われる社会を目指して日々活動を続けている。
臓器移植が必要な人のために、臓器移植コーディネーターの道へ
― これまでのご経歴を教えてください。
大学では農学を専攻していて、大学院に進学後、医学の分野に足を踏み入れました。大学院在学当時は、日本国内での臓器提供を可能にするための議論が活発に行われており、1997年に、臓器移植法が成立。これをきっかけに臓器移植コーディネーターという職業の存在を知り、強い興味を持つようになりました。
修士課程を修了後は、日本腎臓移植ネットワーク(現日本臓器移植ネットワーク/JOT)へと入職。臓器移植コーディネーターとしてのキャリアをスタートさせ、現在もJOTに所属しています。
入職後には、臓器移植についてより深く学ぶため、アメリカへ行ったこともあります。現地の臓器移植コーディネーターの活動を見学し、臓器提供の現場や家族の説明の場にも立ち会いました。アメリカでは、臓器移植の歴史が日本と比べて長いこともあり、臓器提供のプロセスが確立されていて、非常に貴重な経験になりました。
アメリカでは臓器提供のプロセスが非常にシステマティックに行われており、日本とは違った方法論を学ぶことができました。
― 臓器移植コーディネーターという職業自体を、まだ知らない人も少なくありません。具体的に、どういった役割を担うのでしょうか?
確かに耳慣れない職業ですよね。臓器移植コーディネーターの役割は、幅広くあります。まず、ドナーコーディネーターとレシピエントコーディネーターの2つの立場に分類されます。JOTに所属する臓器移植コーディネーターはドナーコーディネーターになります。
ドナーコーディネーターの主な仕事は、臓器提供の希望がある方のご家族に対して、臓器提供に関する説明を行います。臓器提供に対して承諾を得ることができた場合は、その後の一連の手続きまでを担当します。さらに、登録されている臓器移植の希望者の条件に合う臓器の受け手の選定を行い、移植施設への搬送手配なども担当します。
一方で、レシピエントコーディネーターは、各移植施設に所属し、施設内関係部署や移植患者との連絡調整を行います。
― 臓器移植の現場には、欠かせない仕事なのですね。芦刈さんの現在の活動内容を教えてください。
JOTの本部に在籍していて、臓器移植一連の流れを統括する立場にいます。
現在、日本国内では臓器移植を希望する患者が、約16,000人登録されています。臓器を提供しても良いという方がいらした場合に、最も適応する方を登録されている移植希望者の中から選定し、臓器提供のために必要な手続きの対応をします。可能な限り、円滑に進めることも私の役目になります。
また臓器摘出のためのチームの派遣や臓器の搬送手段の手配も必要です。特に心臓移植の場合、臓器を摘出してから4時間以内に移植手術を完了する必要があるため、ここでもスピードが求められます。
これらの一連の流れに対する責任者として、臓器移植の現場に携わっています。
以上インタビューの前半です。次回、インタビュー後半をご覧ください。
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